憲法を仕事と暮らしに生かそう自治労連埼玉県本部日本自治体労働組合総連合

統一要求書

2024春闘・自治労連統一要求書

2024年2月

各自治体首長 様

自治労連埼玉県本部 中央執行委員長  西口 哲之

自治労連埼玉県本部2024年統一要求書

 日ごろから、住民福祉の向上といのち・健康・暮らしを守る公務にご奮闘されていることに敬意を表します。

 さて、元日に能登半島を襲った震災からすでに1ヵ月半近くが経過しています。甚大な被害を受けた石川県では2月13日現在、241人の方が亡くなり、いまだ1万人以上が避難生活を余儀なくされています。水道・下水道などのインフラ復旧や災害ゴミ処理などは、まだまだ長い月日が必要になると見込まれ、あらためて現場を基礎にした公務公共サービスが住民生活に不可欠であり、またそれを担う公務労働者、公共関係労働者の拡充こそ求められる情勢となっています。

 一方で、ギリギリの職員体制、異常な時間外労働、非正規化、外部化(委託・指定管理・派遣・PFI)等がすすんだことは、職員のなり手不足や早期退職・離職者の増加などに顕著に表れてきています。東日本大震災以降も教訓が活かされず、魅力ある職場づくりがすすんでこなかった結果が、災害応援派遣の足かせにもなっていることは見逃してはなりません。

 今年度、民間の賃上げに伴い、若年層への大幅賃上げを含む全世代の給料改善がありました。これは29年ぶりの水準と言われていますが、2020年時点と比較して消費者物価指数が6.4ポイントも上昇しているもとでは、生活改善にはまったくつながっておらず、現に実質賃金は20ヵ月以上連続マイナスが続いています。住民生活の最後の砦として本来の役割を最大限発揮するためにはマンパワーが必要であり、そのためには、安心して住民のために働き続けられる魅力的な賃金・労働条件が不可欠と考えます。

 私たちは「憲法と地方自治の本旨に基づき、住民の生活と権利を支える地方自治を実現すること」及び「自治体業務に関わる全ての労働者の雇用の安定と安心して生活できる賃金・労働条件を保障すること」を二つの大きな柱として、運動を進めています。これらを実現するため、2024年統一要求書を提出します。
 この要求書は、自治体職員の生涯にかかわる要求実現、「全体の奉仕者」にふさわしい賃金・労働条件や職員制度の実現、また住民の暮らしと権利を守り発展させることを求めて、職場要求を聞きながら、長い時間をかけつくりあげてきたものです。そのため、要求事項は広範囲に渡りますが、誠実な回答を求めます。
 なお、回答指定日は3月8日(金)とします。

 < 要 求 項 目 >
 Ⅰ 自治体に働く正規労働者の要求
  1.自治体に働く正規労働者の賃金に関する要求
  2.自治体に働く正規労働者の労働条件に関する要求
  (1)人員確保に関する要求
  (2)人事制度の確立、人事評価制度に関する要求
  (3)労働時間短縮に関する要求
  (4)高齢期雇用(定年延長含む)に関する要求
  (5)両立支援制度に関する要求
  (6)労働安全衛生に関する要求
  (7)共済、福利厚生に関する要求
 Ⅱ 自治体に働く非正規労働者の要求
  1.自治体に働く非正規労働者の労働条件全般に関する要求
  2 会計年度任用職員にかかる要求
  3.その他の非正規職員に関する要求
 Ⅲ 自治体に働く公共関係労働者の要求
  1.自治体に働く公共関係労働者の賃金に関する要求
  2.自治体の公契約(入札・契約等)制度の改善のための要求
  3.自治体と公契約労働者の「労使関係」に関する要求
  4.自治体に働く公共関係労働者の雇用の安定に関する要求
 Ⅳ 自治体が地域の労働関係の模範となるための要求
  1.雇用・労働政策に関する要求
  2.労働者・労働組合(職員団体)の権利に関する要求
 Ⅴ 地方自治拡充と自治体が社会的責任を果たすための要求
  1.憲法を暮らしと行財政に生かすための要求
  2.自治体が社会的役割を発揮するための要求

 < 要 求 本 文 >
Ⅰ 自治体に働く正規労働者の要求

1.自治体に働く正規労働者の賃金に関する要求

(1)給与政策全般に関する要求
 ① 「住民全体の奉仕者」として職務に専念できるよう「生計費原則」に基づいた賃金改善を行い、以下を最低到達賃金モデルとして確立し、給料表を改定すること。
  ア)3級の場合は400,000円以上の到達とすること。
  イ)4級の場合は420,000円以上の到達とすること。
  ウ)5級の場合は430,000円以上の到達とすること。
 (※ 級は国家公務員の給料表(行Ⅰ表)を基準に表記しています。)
 ② 自治体に働く正規職員(以下「正規」)の現行賃金を月額3万円以上引き上げること。
 ③ 初任給を引き上げること。
 ④ 自治体の給与・人事政策に混乱をもたらしている地域手当制度の弊害を「大くくり化」と呼ばれる見直しを機に改めるよう国に対して意見表明すること。
 ⑤ 「給与制度のアップデート」に伴う給与制度改定にあたっては、物価高騰情勢なども踏まえ、生涯賃金削減の制度改悪とはせず、すべての職員の賃上げにつながる制度とすること。
 ⑥ 給料表構造、給与運用、昇任昇格等について、労使合意のもとに、「全体の奉仕者」としての職務を担う自治体労働者にふさわしい制度に改善すること。
 ⑦ 「人事評価制度」の導入にあたっては、労使合意なく賃金への反映を行わないこと。
 ⑧ 総務省・県市町村課による首長及び議会の権限への介入や、交付税算定等の財政措置まで動員した労使自治・地方自治への不当な介入には抗議し、労使協議・労使合意・地方自治を尊重すること。
 ⑨ 国家公務員技能労務職とは職務内容、適用法律と権利関係が異なるにもかかわらず、それを無視した行政職給料表(二)の導入は行わないこと。また、現行の給料表の引き下げは行わないこと。
 ⑩ 現業・公営企業職員の賃金交渉は、法律上「労働組合」との交渉であることを理解し、適法な「交渉」「労働協約」を厳守し、自治体の使用者として模範となる姿勢をとること。
 ⑪ 保育、学童保育、介護及び医療従事者等のいわゆるケア労働者に対して、正規・非正規に関わらず、事業趣旨に則って、一般財源化された処遇改善の原資で確実に賃金引上げをすること。

(2)給料の改善に関する要求
 ① 非管理職級における給料表の最高号給の額を43万円以上にすること。
 ② 非管理職級における高位の基幹号給の間差額を4000円以上にすること。
 ③ 非管理職の誰もが昇格する級を行政職で係長職相当級とし、現業、医療職等についても同等職級とすること。
 ④ 遅くとも30歳主任職級、40歳係長職級、50歳課長補佐職級に格付けできるよう、当局が資質の向上に責任を果たし、公平・公正、客観的基準にもとづく昇任・昇格制度を確立すること。なお、「標準昇格モデル」を明らかにし、昇任・昇格運用を適正に行うこと。
 ⑤ 係長級職員の退職時における級を国家公務員給料表の6級相当(号給付け足しをする)にすること。
 ⑥ 国家公務員に実施されている昇給制度に見合う「昇給加算制度」を実施して、国家公務員の給与水準との比較で自治体労働者に不利益が生じない制度を整備すること。
 ⑦ 55歳以降の昇給抑制等、高年齢職員の能力を不当に低く評価する措置は行わないこと。

(3)手当の改善に関する要求
 ① 地域手当は県内すべての自治体の最低基準を県職員の実質的水準(10%)以上とすること。
 ② 扶養手当を生活実態にもとづいて改善すること。
 ③ 住居手当を生活実態にもとづいて改善すること。また、持家住居手当は、国と地方の昇給原資配分方法の相違、居住実態の相違及び今日までの制度形成の労使交渉経過をふまえて維持・充実させること。
 ④ 一時金は、期末手当に一本化し、支給月数を引き上げるとともに役職加算を廃止して一律支給にすること。当面、勤勉手当の比率を縮小し、人事評価による差別支給は行わないこと。
 ⑤ 特殊勤務手当は労働組合と協議して労働実態に合わせて改善すること。
 ⑥ 時間外手当の割増は、月45時間超から150/100とし、代替休制度については労使合意を前提とすること。
 ⑦ 退職手当の支給水準を引き上げること。
 ⑧ 職場に差別を持ち込む退職手当の調整額制度は廃止すること。廃止されるまでは、調整額制度における格差を縮小させること。

2.自治体に働く正規労働者の労働条件に関する要求

(1)人員確保に関する要求
 ① 人間らしく、健康に働き続けられ、住民福祉の増進に結びつく人員を確保すること。
 ② 東日本大震災の教訓、能登半島地震における課題、さらに頻発する自然災害及び感染症拡大等への対応も想定し、自治体として、住民の暮らし、人権、安全・安心を保障し、公共業務としての誇りと責任をもって働くことができるよう、職員の大幅な増員を行うこと。
 ③ 総務省指導を背景にした人員削減方針は廃止すること。また自治体独自の削減計画も廃止して、職員増員を行うこと。
 ④ 育児、介護、病休者、出向者等の長期休暇・休業の代替を確実に保障し、特に産休・育休の代替は、県内先行自治体を参考に正規職員を配置すること。
 ⑤ 生活保護ケースワーカー、保育士、看護師等、法律や条例により配置基準が定められている職場には、必ず基準が順守されるよう正規を配置すること。
 ⑥ 災害時などの応援派遣に送り出す職員に感染症予防接種を受けさせる場合には、個人負担とせず、適切に公費から支出すること。
 ⑦ 災害時など住民の安全・安心を守るために必要不可欠な現業職員の新規採用を進めること。
 ⑧ 人事交流や不測の災害への応援派遣出向などにあたっては、送り出す職場の人員確保に努めるとともに、事前に労働組合への相談・協議を行うこと。

(2)人事制度の確立、人事評価制度に関する要求
 ① 公務の「公平性・中立性・安定性・継続性」を歪める、「能力・実績に基づく賃金・人事管理」は実施せず、自治体労働者の働きがいを喚起する人事・職場運営制度を確立すること。
 ② 人事評価制度は、情報開示、不服申し立て、苦情・救済制度、訂正権の確立などが明確にされた制度にすること。なお、実質的に労働条件に関わることから、管理運営事項として交渉拒否をせず、労働組合と協議し、合意を前提にすること。
 ③ 人事評価制度の実施には、評価者の恣意的な評価とならないように研修を充実させるなど、客観性が確保できるようにすること。
 ④ 自己申告及び本人からの申し出が尊重される定期異動制度を確立すること。
 ⑤ 人事異動内示の実施時期は、業務執行の実態に配慮すること。
 ⑥ 業務の企画・執行・評価の全ての段階に職員の参加を保障し、職場運営にあたっては職員会議等でコミュニケーションをはかれる体制を整えること。管理職が職員の意見を十分に聞いて業務の企画、執行、見直しを行う職場気風を培うこと。
 ⑦ 自治体内部の不正・違法な行為に対する「内部告発権」と「内部告発者の保護」を制度化すること。また、違法・不当な職務命令に対する「意見表明権」、違法・不当、重大な瑕疵ある職務命令は拒否できることを明確にした制度を確立すること。
 ⑧ 早期退職募集制度の導入は、労使合意を前提とすること。

(3)労働時間短縮に関する要求
 ① 労働時間を短縮し、通常勤務を8時30分始業、昼休憩60分、17時退庁の、1日7時間30分労働とすること。
 ② 労働時間短縮策を具体化すること。
  ア)月100時間以上、2~6か月平均80時間超、年間720時間超の場合は労働基準法違反であり、直ちに改善策を示し実行すること。
  イ)労働安全衛生法第66条の8の3に定める厚生労働省令及び厚生労働省が定めた「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」、総務省「地方公共団体における時間外勤務の上限規制及び健康確保措置を実効的に運用するための取組の推進について(2022年12月26日通知 総行公第154号、総行安第51号)」を踏まえ、職員の労働時間の実態を適正に把握すること。
  ウ)時間外労働規制を具体化するための人員配置の見直しと職員定数増を行うこと。
  エ)全ての職場での36協定締結に向け、労使協議を行うこと。
  オ)時間外労働は、1日2時間、1週5時間、月15時間、年間120時間以内に制限すること。早急に、月45時間及び年360時間を超える職員・職場をなくすこと。
  カ)いわゆる「他律的業務職場」の指定は、労使合意の上で行うこと。また、「長時間労働を抑制し、労働者の健康を確保するとともに仕事と生活の調和がとれた社会を実現する」という改正労働基準法(2018年6月29日成立)の趣旨から逸脱しないようにすること。
  キ)労働基準法第33条第1項(災害等の事由による臨時の必要)、同法第33条第3項(公務のために臨時の必要がある場合)の拡大解釈を行わず、法の本来の趣旨に則った厳格な時間外労働規制を行うこと。
  ク)「過労死等防止のための対策に関する大綱」に記されている「インターバル制度導入の目標」の主旨に沿って必要なとりくみを推進し、直ちに終業時から始業時まで11時間以上のインターバル規制を義務化すること。
  ケ)年次有給休暇の「5日取得義務化」に伴い、促進対策を具体化し、取得日数が少ない職場があれば取得日数を増加させる対策を講じること。
  コ)夏季休暇、リフレッシュ休暇等の制度を確立し、日数を増加すること。
  サ)病気休暇は、治療に要する十分な日数を保障すること。
 ③ 時間外・休日勤務手当等を完全支給し、職場から違法なサービス(不払い)残業根絶を図ること。
 ④ 年休等の休暇が取得しやすい職場環境にすること。
 ⑤ 休憩時間を完全に取得することのできる人員配置及び業務執行体制を確保すること。
 ⑥ 勤務時間の割振りの特例(2015年人勧による「フレックスタイム制」)は、人員不足・過密労働環境のもとでは職員の生活リズムを壊すものであり、自治体の勤務実態にも合わない制度であることから、導入しないこと。
 ⑦ 時差勤務制度の実施は、労使合意を前提とすること。既に実施している場合には、真に職員の健康保持を目的とし、単に時間外勤務手当の削減をするためのものとせず、対象業務の限定、本人同意、十分な時間をおいた事前周知等を最低条件とすること。
 ⑧ 災害出勤時の休日・休暇は労働者の権利と健康・福祉を基本に、労使合意のルールを確立すること。
 ⑨ 週休日と休日の災害出勤における振替・代休の取り扱いは、本人の希望を尊重し、濫用・強制は行わないこと。
 ⑩ 労働基準法第41条の管理監督者についても、労働安全衛生のための労働時間管理を行うとともに、勤務の実態にもとづいた手当制度にすること。  

(4)高齢期雇用(定年延長含む)に関する要求
 ① 定年年齢の延長に伴う高齢期雇用の制度設計及び運用については、労使合意で行うこと。また、住民のために知識・技術・経験が活かされ住民のために働く意欲が高まる制度とすること。
 ② 誰もが安心して働き続けられるためにも、新たな職の開拓、職場環境の改善及び高齢期雇用の必要性の職場理解を図ること。
 ③ 定年年齢引き上げ中も一定の新規採用者を確保すること。また、採用に関連し、定数に支障が生じる場合には、定数条例改正等の対応を図ること。また、中長期的視点に立った定員管理に関する方針について、労働組合に提示すること。
 ④ 60歳年度末後の職員の賃金は、健康で文化的な生活が営める水準とし、職務の内容・職責及び蓄積された知識、能力、経験にふさわしいものとすること。
  ア)定年延長後の減額措置は職務給原則に反し、民間との均衡も失することから早期見直しを行うこと。
  イ)管理職・非管理職に関わらず、60歳年度末後の給料は、最低でも300,000円以上に格付けること。
  ウ)再任用(暫定再任用)職員の給料月額を最低でも300,000円以上にすること。
  エ)再任用(暫定再任用)職員の期末・勤勉手当、扶養手当、住居手当の、60歳前の職員との差別は不合理な格差を自治体に持ち込むものであり、直ちに改めること。
  オ)この間の会計年度任用職員の処遇改善状況も踏まえ、再任用職員の給料格付けの即時見直し、一時金の役職加算付与・拡充を行うこと。
 ⑤ 定年延長に伴い、60歳まで標準的な昇給制度となる見直しを行うとともに、55歳昇給抑制・昇給停止は行わないこと。また、60歳以降も昇給・昇格ができるようにすること。
 ⑥ 定年延長・役職定年に伴う人事は客観根拠のもとに制度化し、情実運用・偏向が生じない制度とすること。
 ⑦ 定年前短時間再任用制度、暫定再任用制度ともに、「雇用と年金の接続」ができるよう、希望する職員は全員を任用すること。
 ⑧ 高齢期になっても安心して働き続けられる職場づくりのためにも、平成16年に地方公務員法で導入された高齢者部分休業制度やキャリア・リターン制度の導入、運用を行うこと。
 ⑨ 65歳までの勤務困難度が高いと思われる職種・職場を特定し、そこで働く職員の65歳までの働く権利を保障する施策を講じること。必要に応じて、業務量調整、加配、時間外勤務制限、身体補助機能設備等への更新、配置ルールや業務システム見直しなども行うこと。
 ⑩ 暫定再任用者の勤務時間については、フルタイムを原則とし、困難業務または本人の希望がある場合は「4分の3勤務」または「2分の1勤務」等の短時間勤務も可能とすること。
 ⑪ 高齢期雇用の制度運用にあたって
  ア)定年延長、定年前再任用短時間勤務、暫定再任用制度は、職種、働く意欲、健康、家庭事情等の様々な条件のもとで選択しなければならないことから、制度を確実に周知し、当事者の希望が確実に反映できる制度にすること。
  イ)高年齢期職員を対象にした「60歳以降の任用制度説明会」を開催し、制度の要点に関わる「説明資料」を庁内で情報共有できるようにすること。
  ウ)「1年前の意思確認制度」については、意思変更が可能で、柔軟な制度とし、その趣旨・取り扱い内容について組合に明らかにすること。
  エ)定年前再任用短時間勤務職員及び暫定再任用職員は定数外とすること。

(5)両立支援制度に関する要求
 ① 仕事と育児・介護等の両立を支援する制度に関する利用の手引き(例:人事院作成の両立支援ハンドブック)を作成し、周知すること。
 ② 妊娠・出産・育休又は介護を理由とする不利益取り扱い(マタハラ等)防止を周知・徹底させること。そのためにも、「妊娠・出産・育休又は介護に関するハラスメント防止のための要綱」等を整備するとともに、権利取得を妨げないよう相談・対応が可能な体制を整備すること。
 ③ 「育児のための短時間勤務制度」は、本人の選択権の保障、不利益取扱の禁止、十分な代替職員の確保など、実効性ある制度として確立すること。また、詳細は労使合意のもとに決定すること。
 ④ 育児休業・介護休暇に関わる所得保障の拡大を図ること。また、介護休暇は、共済掛金・社会保険料等の免除、給与に係る不利益扱いの撤廃をするなど、家族責任の行使にともなう不利益はなくすこと。
 ⑤ 女性活躍推進法・次世代育成支援対策推進法にもとづく「特定事業主行動計画」の策定・改定・具体的推進については、労働組合と協議して実効ある手立てを講じ、実施状況の検証をすること。
 ⑥ 有給での育児休業や介護休暇等の制度を拡充し、男女ともに取得しやすい環境を整備すること。
 ⑦ 不妊治療のための休暇制度について、性別に関わらず、取得しやすい職場環境を整備すること。
 ⑧ 子の看護休暇については国の動向、県職員の制度にならい「学校行事参加」の取得要件拡充を行うこと。

(6)労働安全衛生に関する要求
 ① 事業場を構成するすべての雇用形態の職員が参加する安全衛生委員会を設置し、委員会の月1回以上開催や職場巡視を行うこと。委員会では、労働安全衛生規則に定められた付議事項についての調査審議、審議内容の職員への周知を進め、委員会の議事に基づき労働安全衛生を強化すること。
 ② 労働安全衛生委員会の設置、管理者・推進者配置など労働安全衛生法を遵守するとともに、厚生労働省「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」(1992年7月1日労働省告示第59号)等にもとづいて、実効ある労働安全衛生事業を実施すること。
 ③ 長時間過密労働をなくすため、「過重労働による健康障害防止のための総合対策」(2020年4月1日改正)、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(2006年3月31日厚労省労働基準局長通知)及び「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(2017年1月20日)に則った対応を行うこと。
 ④ 「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(2021年12月1日改正)など、厚生労働省の指針をふまえた労働安全衛生対策を強化すること。
 ⑤ メンタルヘルス対策として、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に基づき、「心の健康づくり計画」「職場復帰プログラム」の作成など、実効ある対策に取り組むこと。
 ⑥ セクハラ、パワハラ防止のための啓発活動に取り組むとともに、労働組合が参加した苦情処理機関を設置するなど、セクハラ、パワハラ防止制度の確立・改善に取り組むこと。
 ⑦ パワーハラスメント対策として、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(2020年1月15日厚労省告示第5号)」及び「人事院規則10―16(パワー・ハラスメント の防止等)」に基づき防止指針を定めて実効ある対策に取り組むこと。また、定めた指針について、周知・研修の実施をすること。
 ⑧ 首長による、「パワハラは許さない」旨の宣言をし、職員に周知すること。
 ⑨ 弁護士など第三者を活用した、相談・申出体制を整備すること。
 ⑩ セクハラを防止するため、厚生労働省の「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(2020年1月15日厚労省告示第6号により最終改正)に基づく措置を取るほか、実効ある対策に取り組むこと。
 ⑪ 労働安全衛生法によるストレスチェックは、職場環境の改善やメンタル不調の早期発見に生かし、その結果が職員の不利益とならないようにすること。
 ⑫ 公務(労働)災害が発生した場合は、適切に公務災害認定申請を行い、労働基準監督署には必要な報告を行うこと。
 ⑬ 感染時の重症化リスクが指摘されている、「高年齢職員」「基礎疾患がある職員」「免疫抑制状態にある職員」に対して、引き続き、安全衛生上の健康管理措置を講じること。
 ⑭ 科学的根拠に基づく職場における感染対策、検査対応及び感染後対応を周知し、徹底すること。

(7)共済、福利厚生に関する要求
 ① 公務員制度の一環としての共済制度・福利厚生の維持・拡充に積極的に取り組むこと。
 ② 年金の支給水準を引き上げるよう国に要請すること。また、年金積立金の運用については、安全を第一に考慮するよう国に要請すること。
 ③ 後期・前期高齢者医療への拠出制度による短期財源率の負担増に反対し、国に改善を要請すること。
 ④ 共済組合短期給付の適用範囲が非常勤職員まで広がったことに伴う、共済掛金率の引き上げは行わないよう共済組合に要請すること。
   また、多くの職員が協会けんぽから共済組合に移行していることから、それに見合った国庫負担分は共済組合に移行するよう国及び共済組合に要請すること。
 ⑤ 地方公務員法第42条に基づき、使用者(=首長)の権限で実施すべき職員の福利厚生事業を充実させること。

Ⅱ 自治体に働く非正規労働者の要求

1.自治体に働く非正規労働者の労働条件全般に関する要求

(1)基本賃金に関する要求
 ① 非正規の最低賃金を、時給1,500円以上に引き上げること。
 ② 自治体に働く臨時・非常勤職員(以下「非正規」)の賃金を月額3万円以上、時給190円以上引き上げること。
 ③ 保育、学童保育、介護及び医療従事者等のいわゆるケア労働者に対して、正規・非正規に関わらず、事業趣旨に則って、一般財源化された処遇改善の原資で確実に賃金引上げをすること。

(2)格差改善に関する要求
 正規との格差を解消し、「生活給保障」「均等待遇」を基本にした賃金制度に改善すること。また、正規と同等の業務を担う非正規について、職務の実態にふさわしい賃金を保障すること。当面、同種の正規の地域手当を含めた賃金の8割以上の水準に引上げること。

(3)手当改善に関する要求
 非正規の賃金改善のために、正規との「均等待遇」「平等取扱」が確保されるように法整備と地方自治法第203条の2の改正を国に提言し、人事院・人事委員会が積極的な改善勧告を行うように働きかけること。また、十分な財政措置がとられるよう国に要望すること。

(4)雇用原則に関する要求
 ① 反復継続雇用してきた非正規は、恒常的業務を担う労働者であることを認め、「雇用期間満了」を口実に「雇い止め」を行わず「雇用期間の定めのない労働者」として処遇すること。
 ② 自治体都合による施設の統廃合などで生じる雇用問題では、雇用保障を確実に行うこと。
 ③ 任期付常勤職員・任期付短時間職員制度は安易に導入せず、労使合意を尊重すること。
 ④ 正規と同様の業務に従事する非正規は正規として採用すること。

(5)雇用の安定に関する要求
 ① 合理的理由のない任用更新回数の上限設定は行わないこと。特に、「有期労働契約の反復更新の下で生じる解雇に対する労働者の不安を解消することにより、労働者が安心して働き続けることが可能な社会の実現を図る」という労働契約法改正の主旨に反する雇い止めは行わないこと。
 ② 年度をまたぐ公務災害療養中、私傷病休暇中、産前・産後休暇中、育児・介護等休暇中の年度職員の療養や休暇の権利が保障され、制度の実質が確保される運用を行うこと。
 ③ 非正規の雇用と年金の接続をはかるため、正規との均等待遇を基本に、高齢期の雇用と生活を保障する制度を確立すること。

(6)その他の勤務条件について
 ① 非正規の労災・公務災害補償(申請)を適正に行うこと。
 ② 労働災害に被災した非正規の雇用、生活補償は使用者である自治体が責任をもって対応し、被災を原因とする労働能力低下を理由に、雇い止め、意に反する配置替え、賃金・労働条件の引き下げを行わないこと。
 ③ 育児介護休業法、人事院規則10-11に規定されている「所定外労働の免除」「時間外労働の制限」「深夜労働の制限」を順守すること。
 ④ 「Ⅰの2の(5)両立支援制度に関する要求」及び「(6)労働安全衛生に関する要求」については、非正規労働者についても同様に対応すること。
 ⑤ 研修・福利厚生については、正規職員に準じて制度整備を図ること。

(7)社会保障制度について
 ① 公務上の負傷・疾病については、休暇、任用、生活補償を使用者である自治体が責任を持つこと。
 ② 市町村職員共済組合への加入資格を満たす者については、その加入を円滑におこなうこと。共済組合加入までの間は、現行の社会保障・福祉・共済制度を維持すること。
 ③ 市町村職員共済・厚生年金保険・雇用保険への加入資格を満たす者については、その加入を円滑に行うこと。加入を回避するための意図的な労働時間の調整をおこなわず、制度を順守すること。
 ④ 「Ⅰの(7)共済、福利厚生に関する要求」については、非正規労働者についても同様に対応すること。

2 会計年度任用職員にかかる要求

(1)任用の原則について
 ① 基幹的・恒常的業務であって、フルタイム勤務であることが住民の福祉の増進にかなう職には、任期の定めのない常勤職員でおこなうという公務運営の原則を順守し、正規職員を配置すること。
 ② 正規職員の会計年度任用職員への置き換えは行わないこと。
 ③ 業務の実態としてフルタイムの職員を配置する必要がある職には、フルタイム会計年度任用職員を配置すること。
 ④ 同一の業務に複数の非正規職員を配置(いわゆるリレー勤務)し、その総和が7時間45分以上となる業務については、正規職員を配置すること。
 ⑤ 民間非正規労働者に適用されている労働契約法第17条から19条及びパート有期雇用労働法の主旨を活かし、任用の安定と不合理な格差是正をはかること。
 ⑥ 「再度の任用」のルールは、下記により対応すること。
  ア)公募は、欠員、増員、新たな職の発生に限定し、現に在職者がいる職は、「任期中の公募」を行わないこと。
  イ)本人の継続勤務の意思、働き方の希望を確認し、任用継続を希望する場合は、公募によらず能力実証をもとに「再度の任用」を行うこと。
 ⑦ 次年度任用は、遅くとも1月には当事者に意向を示し、「任用通知」を発出すること。
 ⑧ 現在の職が廃止される場合に継続勤務を希望する職員には、他の職を確保すること。
 ⑨ 公務災害療養、私傷病療養、育児休業、介護休業等期間中であっても任用を継続すること。年度をまたぐことを理由に雇止めはしないこと。
 ⑩ 以上の「⑥から⑨」について、会計年度任用職員を任用している担当課に周知すること。とりわけ、1年任用形態の労働者であっても、働く権利・生活する権利が侵害されないよう、任用担当課に対し、制度と権利に関する研修等を行い、周知徹底を図ること。
 ⑪ 1週当たりの勤務時間が30時間以上である会計年度任用職員パートタイムの職で、フルタイムとすることで住民の福祉の増進にかなう職、フルタイムとすべき業務量がある職については、会計年度任用職員フルタイムとすること。ただし、本人の希望や都合により、現行の勤務時間を希望する職員については、その意思を尊重 し、パートタイムとして任用すること。
 ⑫ 会計年度任用職員パートタイムは、業務内容・量に見合った適切な労働時間を設定すること。
 ⑬ 社会保険適用逃れ・リレー勤務などコスト削減を目的とした短時間勤務配置は行わないこと。
 ⑭ 会計年度任用職員の条件付き採用を理由とする解雇の濫用は行わないこと。
 ⑮ 会計年度任用職員パートタイムの「兼業」は、公共の福祉に反しない限り、職業選択の自由を尊重すること。なお、「兼業」させるにあたっては、1日8時間、週40時間、週休保障を原則とするとともに、財政都合を優先した任用・働かせ方をさせないこと。
⑯ 「兼業」の届出をさせる場合には、許可を前提に労働者の自由を奪う取り扱いはしないこと。

(2)賃金について
 ① 基本賃金について
  ア)給料・報酬は月額給を基本とすること。なお、パートタイムについて日給、時間給とする場合は、その根拠を明確にし、労使合意を図ること。
  イ)給料表は、正規職員の行政職給料表1級から3級の複合表とすること。
  ウ)会計年度任用職員の初任の給料額は、国公(行Ⅰ)表の1級11号以上を最低基準とし、地域手当相当額を加算すること。
  エ)資格職・専門職の会計年度任用職員の初任の給料(報酬)は、同種の職務の正規職員の初任の給料月額に地域手当の率を乗じた額を加算した額を最低基準額とすること。
  オ)会計年度任用職員の給料に昇給上限を設けないこと。また、昇給にあたっては、最低でも、週30時間以上の勤務者は4号、週20時間以上30時間未満の勤務者は3号、週20時間未満の勤務者は2号とすること。
 ② 手当について
  ア)正規職員に支給している手当は、フルタイム・パートタイムにかかわらず、全て同水準で支給すること。
  イ)費用弁償は、正規職員と同等とすること。勤務日数が少ない場合は、実費支給とすること。交通用具利用者の費用弁償については、正規職員と同等の支給基準で、勤務日数に応じて公平に支給すること。
  ウ)パートタイムであっても、正規職員・会計年度任用職員フルタイムとの均等待遇の視点から、自治体独自の退職金支給制度を創設すること。

(3)休暇・休業制度について
 ① 年次有給休暇について
  ア)年次有給休暇は任用初日から付与すること。
  イ)年次有給休暇の付与日数は次のとおり改善すること。
   ⅰ)1週間の所定労働時間が30時間以上の職員には、任用当初から20日付与することとし、最低でも下表の日数以上を付与すること。

勤続年数当初~1年~2年~3年~4年~5年
付与日数12日14日16日18日20日

   ⅱ)1週間の所定労働時間30時間未満の労働者については、最低でも下表の日数以上を付与すること。

週所定労働日数年間所定労働日数当初~1年~2年~3年~4年~5年
217日~ 1214161820
169~216日10111316
121~168日1012
73~120日
48~ 72日

  ウ)労働基準法に基づく繰り越し、勤務年数加算をおこなうこと。
 ② 病気休暇(公務・私傷病を問わず)は、正規職員に準じて制度を整備すること。当面、公務傷病か私傷病かを問わず最低3日の有給休暇とし、私傷病による病気休暇取得期間は最低30日とすること。
 ③ 特別休暇について
  ア)フルタイム勤務者については、正規職員に準じて整備すること。
  イ)パートタイム勤務者については、勤務日数、勤務時間をふまえ、フルタイム勤者との均衡に配慮して、公平な休暇制度を整備すること。
  ウ)フルタイム、パートタイムを問わず、正規職員が有給としている休暇については、同様に有給休暇とすること。   

(4)人事評価制度について
 全体の奉仕者としての職務能力の向上に役立つ制度とし、任用、賃金、労働条件を左右するような制度とはしないこと。

3.その他の非正規職員に関する要求

(1)臨時的任用職員について
 ① 新制度における任用厳格化の主旨を踏まえ、「正規職員に欠員が生じた場合」のみの任用とすること。
 ② 労働条件は正規職員に準じること。

(2)任期付職員について
 ① 現在、正規職員を配置している職について、任期付職員の導入はしないこと。
 ② 導入する場合には、正規職員同等の労働条件を保障すること。昇給・昇格についても同様とすること。
 ③ 任期満了で機械的に雇止めにせず、事業(事務)が引き続き存在する場合は、業務に従事してきた職員の貢献を評価し、任用を継続すること。任用を継続する場合は、昇給を継続しておこなうこと。
 ④ 任期付短時間勤務職員の給料は、任期付職員フルタイムの給料をもとに時間数に応じて按分した月額給にすること。また、手当についても同様とすること。
   休暇については、任期付職員フルタイムの休暇を基準に、勤務日数、勤務時間を配慮し、公平な制度整備を図ること。

Ⅲ 自治体に働く公共関係労働者の要求

1.自治体に働く公共関係労働者の賃金に関する要求

(1)基本賃金に関する要求
 ① 公共関係労働者の産別最低賃金を時給1,500円以上に引き上げるための施策を実施すること。 
 ② 委託、指定管理、派遣など、自治体業務で働く労働者(以下「公共関係労働者」)の賃金を月額3万円以上、時給190円以上引き上げるための施策を実施すること。
 ③ 埼玉県最低賃金以下の職場がある場合は直ちに指導し、改善させること。
 ④ 保育、学童保育、介護及び医療従事者等のいわゆるケア労働者に対して、正規・非正規に関わらず、事業趣旨に則って、一般財源化された処遇改善の原資で確実に賃金引上げをすること。

(2)人件費に関わる委託料の積算制度に関する要求
 ① 最低賃金の引上げ、物価高騰等の社会環境の変化に対応した賃金を保障できるように委託料・予定価格の積算(以下、指定管理料も含めて「委託料」とする)を見直し、委託料の積算にあたっては、「生活給保障」「自治体正規との均等待遇」の理念を尊重すること。
  少なくとも、委託料の積算を理由に、受託業者が労働条件を改悪したり、社会的水準を下回ったりすることを正当化する口実とならない水準を確保すること。
 ② 委託料の積算は、直接人件費(必要な人員数、給料・一時金・諸手当等、労働者負担の社会保険料・労働保険料等)と、間接人件費、直接・間接事業費、販売管理費等を分離して、直接人件費額を明示し、入札前に公表し、人件費を利潤の対象にさせない仕組みとすること。
 ③ 委託契約にも客観的・科学的な積算根拠を導入すること。とくに、労働条件の法令遵守、休暇取得の保障、公共サービスの質確保、労働者福祉の向上のために「必要な人員数」を明らかにし、これをもとに積算する仕組みを確立すること。
 ④ 最低制限価格を、人件費を除いた事業費、販売管理費等のみで算出し、積算された人件費が確実に労働者の賃金となるように公契約制度の適正化を図ること。

2.自治体の公契約(入札・契約等)制度の改善のための要求

 ① 公共関係労働者の雇用、賃金、労働条件は、会計年度任用職員など同種の自治体労働者との均等待遇を原則に入札・契約制度を整備すること。
 ② 不公正入札・ダンピング入札による雇用破壊、労働条件と公共サービスの低下を招かない制度を整備すること。
 ③ 総合評価方式を活用して、価格競争だけでなく、ⅰ)当該業務の質・付加価値向上の提案内容と体制整備状況、ⅱ)労働者の長期・安定雇用施策の状況、ⅲ)受託業務の性格と公共業務にふさわしい賃金・労働条件の確保状況、ⅳ)労働法令遵守と労働基本権を保障する姿勢と施策の状況、ⅴ)地域経済貢献、地元企業育成の視点での取組状況、ⅵ)環境・防災・個人情報等の総合的課題への取組状況、などから総合的に評価して選定する制度を整備すること。
 ④ 公契約適正化、公契約条例制定に向けた「検討の場」を設置し、労働組合等からの「意見聴取」の機会を設けること。
 ⑤ 委託・指定管理にあたっては、労働関係法令が遵守され、違法・不当な雇用管理、労働条件決定が行われない制度にすること。委託・指定管理後も現場調査等を行って事業の質(住民サービス)と雇用・労働条件の履行状況を点検すること。

3.自治体と公契約労働者の「労使関係」に関する要求

 公共関係労働者の雇用・労働条件は、公契約によって拘束されることを踏まえ、公共関係労働者の実質的な使用者(背景使用者)としての立場にあることを認識し、責任ある対応をすること。

4.自治体に働く公共関係労働者の雇用の安定に関する要求

(1)解雇・雇止め防止に関する要求
 ① 契約先変更を原因とする解雇・雇い止めを防止する手立てを講じること。
 ② 公共業務で解雇・雇い止めが発生し、当該労働者から安定・継続雇用の要望があった場合は、労働者の雇用・福祉への責務を全うすること。
 ③ 長期継続契約を締結する際には、少なくとも契約期間に合致する雇用期間で労働契約を締結して雇用を安定させる契約内容とすること。
 ④ 労働基準法施行規則第5条の改正に伴い、2024年4月から労働条件明示に関連し、非常勤等職員について無期転換申込権が発生するタイミングごとにその旨(無期転換申込機会)の明示が義務化されることから、適切に対応されるようにすること。
 ⑤ 雇い入れ後5年を超えて雇用されている労働者は、その申込みにもとづき無期雇用契約にされるようにすること。また、無期転換権発生前の脱法的雇止めは認めず、指導・監督すること。

(2)自治体の法令遵守を求める要求
 ① 外部化された業務を厚生労働省の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37号告示)に基づいて点検し、職業安定法、労働者派遣法等に違反する実態がある場合は直ちに改善すること。
   その際、現に業務に従事している労働者が当該業務に就いた原因は自治体側にあることから、雇用責任を全うすること。
 ② 労働法規が適用されないシルバー人材センター会員(派遣を除く)を、「臨時、短期、軽易の業務」「労働者の雇用を侵食しない」とした高年齢者雇用安定法の趣旨を逸脱して従事させないこと。当面、従事する職務は「継続期間が3ヶ月以内の職」、かつ「1日6時間未満で交代就業の必要のない職」に限定すること。
 ③ 雇用労働者が従事すべき業務にシルバー人材センター会員を従事させていた場合は、本人の同意のもとに直接雇用に切り替えること。
 ④ 「派遣就業は臨時的・一時的なものであるべきとの基本原則」(2015年労働者派遣法改定時の国会附帯決議)を遵守し、その趣旨をすべての職場に徹底すること。
 ⑤ 派遣期間が3年を超える派遣労働者の期間終了に当たっては、派遣元に対して、改定労働者派遣法に基づく実効ある「雇用安定措置」をとるよう求め、本人が自治体への直接雇用を希望する場合には直接雇用とすること。
 ⑥ 派遣可能期間を延長しようとする場合の労働組合等への意見聴取手続においては、意見を検討するための十分な考慮期間をおき、異議に対しては労使交渉により合意をはかること。
 ⑦ 新たに労働者派遣を受け入れる場合は事前に労働組合に説明を行い、合意のもとに実施すること。

Ⅳ 自治体が地域の労働関係の模範となるための要求

1.雇用・労働政策に関する要求

(1)政府への要請に関する要求
 ① 解雇規制を緩和する「解雇の金銭解決制度」導入、長時間労働をもたらす「高度プロフェッショナル制度」、裁量労働制の拡大、雇用によらない働き方の推進は、国民の不安定雇用を拡大し、結果として社会保障への依存度を高めかねないことから反対し、雇用の安定化と労働時間短縮促進を政府及び関係機関に働きかけること。
 ② 労働者の生存権保障、格差社会の是正のため、埼玉県最低賃金額を今すぐ「時間額1,000円」以上に引き上げ、産業別最低賃金制度の堅持・改善、全国一律最低賃金制度及び自治体産業別最低賃金制度を確立するように政府及び関係機関に働きかけること。

(2)自治体施策・姿勢に関する要求
 ① 憲法上の権利保障に関わる業務は自治体が直接責任を持って直営で行う原則を守ること。既に外部化した業務についても、雇用を維持した上で直営に戻すこと。
 ② 恒常的な業務における雇用は正規労働者が担う原則を守ること。民間委託、指定管理、労働者派遣の事業者に対しても自治体が背景使用者として責任ある対応をすること。
 ③ 民間委託、指定管理者制度、労働者派遣の受入れ等は、公務の公共性・専門性及び労働条件と深く関わるものであることから、労働組合との合意なしには導入しないこと。
 ④ 労働法令に関する職員研修を実施し、労働法令遵守・労働安全衛生の向上と非正規・公共関係労働者への適正な対応ができる職場体制を整えること。
 ⑤ 公共サービス基本法制定や各地で進む「公契約条例」制定の動きに応えて「公契約条例」制定の取り組みに着手すること。
 ⑥ 地域・地場産業の支援策や中小零細業者への雇用促進につながる労働者支援施策を拡充し、内需を拡大すること。

2.労働者・労働組合(職員団体)の権利に関する要求

(1)団結権、労働組合活動の自由保障に関する要求
 ① 労働組合の権利を尊重して誠実な交渉・協議を行うこと。労働条件の変更にあたっては労使合意を厳守すること。
 ② 正規、非正規を問わず、交渉準備活動など、労働組合の正当な時間内活動を保障すること。
 ③ 人事当局として、管理職員等の範囲については、労働組合法第2条、地方公務員法第52条第3項の趣旨を正しく適用し、「名ばかり管理職」については直ちに是正するとともに、恣意的な拡大を行わないこと。また、見直し等にあたっては、事前に労働組合との相談・協議を行うこと。
 ④ 課長補佐職については、原則として管理職員等の範囲から除外すべきであることを見解表明すること。
 ⑤ 組合事務所、掲示板及びチェックオフ等の便宜供与は、職場活動と団結権保障の最低限の措置であり、労働組合法の定めに根拠を持ち、国際基準と長年の労使の合意をもって実施されてきた経緯を尊重して維持・拡大すること。
 ⑥ 自治体職員の政治的・市民的権利行使の自由を保障すること。地方公務員法第36条を十分理解し、その誤解等による職員への権利侵害行為には毅然と対応し、正しい理解を求めて説明すること。

(2)政府への要請に関する要求
 ① 憲法28条が保障している労働基本権をすべての自治体労働者に全面的に回復させるように政府及び関係機関に働きかけること。
 ② 憲法21条が保障する政治的・市民的自由を自治体労働者にも完全保障するように政府及び関係機関に働きかけること。
 ③ 消防職員に対して、ILO勧告にもとづいて無条件で団結権、協約締結権を保障するように政府及び関係機関に働きかけること。当面、消防職員委員会を充実させ、民主的運営を行うよう働きかけること。

Ⅴ 地方自治拡充と自治体が社会的責任を果たすための要求

1.憲法を暮らしと行財政に生かすための要求

(1)住民のくらし擁護に責任ある首長としての政府への要請に関する要求
 ① 現行憲法を堅持し、国民主権、恒久平和、民主主義、基本的人権の尊重、地方自治の理念などの憲法理念を国民の暮らしに生かすように政府及び関係機関に働きかけること。
 ② 「三位一体改革」によって縮減されてきた「地方財政計画」の規模を復元し、地方交付税の財源保障機能と財政調整機能を回復させる制度見直しを行うように政府及び関係機関に働きかけること。
 ③ 税率・税配分の見直し及び国から地方への一般財源の拡充で、ナショナルミニマムの達成に国としての責任を果たすように政府及び関係機関に働きかけること。
 ④ 国の財政誘導による自治体政策への介入をやめ、自治体の自己決定権を保障する地方財政の拡充を政府及び関係機関に働きかけること。
 ⑤ 国の役割を外交、防衛、危機管理等に限定し、社会保障、教育など国民生活に関わる責任を住民と自治体の「自己責任」「自己決定」に転嫁する「地方分権改革」・道州制に反対し、憲法に基づく民主的な地方自治制度を確立するように政府及び関係機関に働きかけること。
 ⑥ 自治体戦略2040構想研究会報告は、公務の産業化と地方自治の変質につながることから、推進しないよう政府及び関係機関に働きかけること。
 ⑦ 政府が進める「自治体デジタルトランスフォーメーション(自治体DX)」は、住民への権利侵害や地方自治の侵害が懸念されることから、導入検討にあたっては以下の対応をすること。
  ア)自治体DXの導入によって、自治体職員の労働条件(業務内容や働き方を含む)に変更が生じることから、労働組合への適切な情報提供と労働条件に関することは労使合意を図ること。
  イ)自治体DXは、住民サービスの充実、基本的人権の擁護、住民福祉の増進を図り、自治体職員が「全体の奉仕者」の役割を発揮でき、職員の労働負担を軽減することを目的に活用すること。
  ウ)自治体が保有する住民の個人情報の取り扱いは自治事務であることから、地方自治の本旨に基づき、自治体が自主的に取り扱うこと。住民の個人情報の保護は、自治体の責務であり、個人情報の集約化、流用、外部への提供は行わないこと。
  エ)自治体DXの導入の是非及びその方法は、住民に情報公開をするとともに、住民合意の上で進めること。
  オ)地方自治体の業務にデジタル化を導入する場合でも、業務処理の内容が住民福祉の増進の目的に沿ったものであるかどうかを自治体の職員が日常的にチェックできる体制を確保すること。デジタルのシステム開発や変更、メンテナンスについても、民間企業や外部の人材任せにするのでなく、公務公共サービスに責任を持つ自治体の職員が自ら管理・チェックできる体制を確保すること。デジタルのシステムが災害やトラブルなどによって機能しなくなった時に、自治体の職員が即時に対応できるシステム・体制を整備・確保すること。
  カ)地方自治体における民間DX人材(CIO補佐官等)を任用する場合は、常勤職員として採用し、「全体の奉仕者」として、安心して公務に専念できる勤務条件を確保すること。出身企業はもとより利害関係のある企業等との会食や企業等からの接待など、行政の透明性・公正性を歪めるおそれのある行為を厳しく規制すること。
  キ)自治体独自の住民サービスを維持・向上するために必要な場合は、国の標準化によらず、「オプション機能」や「パラメータ処理」、「別アプリ」による連携やカスタマイズを行えるようにすること。システムの整備に係る経費は「オプション機能」や「パラメータ処理」、「別アプリ」による連携やカスタマイズも含め国が負担すること。

(2)分権と住民参加の促進に関する要求
 ① 「三位一体改革」による自治体への影響やその後の財政悪化の背景を住民に分かりやすく公表すること。
 ② 住民参加による地方財政確立運動に取り組むこと。なお、当労働組合にも財政状況を説明する機会を設け、ともに財政確立に取り組むこと。
 ③ 埼玉県権限移譲方針にもとづく事務・権限移譲については、当該職場の職員の総意にもとづいて対応し、十分な職員体制を確保せずに安易な移譲受入をしないこと。
 ④ 「公共施設等総合管理計画」の実施については、職員の意見を反映させるとともに、住民に対する情報公開を徹底し、十分な時間をとり説明し、合意形成をはかること。
 ⑤ 公共施設の統廃合によって住民の権利保障を後退させないようにすること。

2.自治体が社会的役割を発揮するための要求
 ① 東日本大震災・能登半島地震をはじめとした災害被災地の復旧復興は、被災者の生活と生業の再建、地元の中小業者、農林水産業者の経営再建を第一に行うよう政府及び関係機関に働きかけること。
 ② 復旧復興に関わる財源を国の責任で確保し、被災自治体への負担を軽くするよう政府及び関係機関に働きかけること。
 ③ 福島第一原発事故の原因を徹底究明し、政府の責任で汚染水対策、除染など原発事故の収束を進めるよう政府及び関係機関に働きかけること。
 ④ 各地で進みつつある原発再稼働をさせず、原発ゼロに向けて原子力行政を抜本的に見直し、再生可能エネルギーを温暖化防止、省エネとあわせて推進するように政府及び関係機関に働きかけること。
 ⑤ 低所得者ほど重い負担となる消費税増税に頼らずに社会保障を拡充させることを政府及び関係機関に働きかけること。
 ⑥ 中小業者や個人事業主などをおびやかす消費税のインボイス制度の実施は中止するよう政府及び関係機関に働きかけること。
 ⑦ 地域経済循環を生かした経済振興を図るように政府及び関係機関に働きかけること。
 ⑧ 日本を戦争に巻き込む集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回、「安保法制」、「特定秘密保護法」及び「共謀罪法」の廃止を政府及び関係機関に働きかけること。
 ⑨ 憲法の地方自治原則否定のもとに強行されている沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設をただちに中止するよう、政府及び関係機関に働きかけること。
 ⑩ 職員に憲法と地方自治に関する研修を実施・充実し、「全体の奉仕者」としてのあり方につい  ての自覚を醸成すること。

以上