自治体職員に読んでほしい「30分でわかる日本のいま!」◇後編◇
~23春闘から夏の人事院勧告・秋の賃金確定に向けて~
23春闘を受け、元気に夏から秋への運動を進めるため、賃金引上げ、労働時間短縮、制度改善の必要性を、日本の現状から知ろうというページ。後半です。引き続きあと10分、読んでみてください。
※このページは、自治労連入間市職員組合機関紙の連載をまとめたものです。
◇前編・目次◇
(1)没落途上!?にある日本経済
経済が成長している国と日本 何がどう違う?No.1
(2)異常な日本の時間外労働
経済が成長している国と日本 何がどう違う?No.2
(3)日本の子育て環境は?
この30年 日本の政府と財界がすすめた政策は?
◇後編・目次◇
(4)税収の税収の推移から見た「日本の現状」 は ?
大企業・大富豪ほど税の負担率が低い現状は「?」
(5)生み出した収益(富)が労働者に回らない日本
不公正税制を正し、異常に溜め込んだ内部留保の社会還元を!
(4)税収の税収の推移から見た「日本の現状」 は ?
政治や行政の最も大きな役割は、必要なお金を「どう集め」「どう使うか」です。今回は、この間の税収の推移(消費税、法人3税、所得税・住民税)から考えてみましょう。
上のグラフは、消費税収入がどれだけあったか、そして法人3税の減収及び所得税・住民税減収がどうなっているかを示したものです。
所得税と住民税は累計288兆円の減収となっています。賃金の抑制や非正規労働者の増加などによって国民所得が減ったことが原因です。
法人3税も累計315兆円の減収となっています。この間に内部留保を大幅に積み増ししているように、企業全体の収益が減ったからではありません。法人税率の引き下げ(37.5%から23.2%)や様々な租税特別措置などの大企業減税によるものです。
消費税収入は、累計で447兆円です。消費税は、最終消費者が負担する仕組みですから、国民は、所得が大幅に減った中で、447兆円もの消費税を負担してきたことになります。
国民が負担した消費税のうち、315兆円が大企業減税に使われ、全体の税収は累計156兆円も減っています。
医療や介護などの社会保障負担も増加しています。EU主要国と比べた社会保障財源の内訳をみると、日本は、企業負担が低く、保険料と消費税を合わせた国民負担が最も高い割合です。
大企業・大富豪ほど税の負担率が低い現状は「?」
資本金10億円以上の大企業の2021年の内部留保は484兆円、2022年には500兆円を超える見込みです。2022年の国民総生産(GDP)552.3兆円に匹敵する水準です。その背景には、様々な優遇税制があり、もっぱら大企業だけがこうした制度を利用できることにあります。
大企業の実質税率10・2%
法人税の税率は23.2%ですが、様々な優遇税制があるため、大企業の法人税の実質負担率は10.2%にすぎません(左図上段)。
約370項目ある租税特別措置で庶民が思い浮かべるのは、「住宅取得控除」や「エコカー減税」相続税の「小規模宅地減税」程度ですが、大企業向けには、様々な優遇制度があります。
額の大きいものでは、「研究開発促進税制」(左図中段)や「受取配当金不算入」・「外国子会社からの受取配当金不算入」(左図下段)があります。しかし、実際に利用できるのは、ほとんどが資本金10億円以上の大企業です。
租特法による減収は8兆円
租税特別措置法(租特法)は、「公平・中立・簡素」を原則とする税制の例外措置で、期限を定めた時限立法です。「隠れ補助金」とも言われていますが、その効果の検証も不十分のまま延長が繰り返されて既得権化し、「不公正」との指摘がされ続けてきました。
財務省が国会へ提出した試算では、2020年度の減収額は8兆円を超えています。試算は全ての項目ではなく、株式譲渡への優遇措置などは含まれていません。
国公労連の試算では約9・8兆円に上ります。
下のグラフは1兆円の壁と言われるもので、株式配当や譲渡益の税率が低いために、所得が1億円を超えると負担率が低くなることを示したものです。
日本は、先進主要国に比べて株式投資利益への税率が低く(下の表)、これまでも金持ち優遇との批判が強いものです。
こうした不公正な税制を改めるだけで、多額の財源を確保することができます。
(5)生み出した収益(富)が労働者に回らない日本
労働者が働くことで生み出した収益(富)が、労働者にどう配分されてきたのか。
今回は、労働者の賃金、大企業の内部留保、株式配当の推移を見て考えてみましょう。
OECD加盟国の中で日本だけが▲10・9%も賃下げ
日本の実質賃金がピークだった1997年から2020年の増減を比較したのが上のグラフです。OECD加盟国で日本だけが10.9%ものマイナスとなっています。その結果、2021年の日本の実質消費支出は、2000年と比べて年間62万円も減ってしまいました(総務省家計調査)。日本の経済が低迷している原因も、実質賃金が低下して家庭の消費支出が減ったことにあります。
大きく変わった利益(付加価値)の配分
賃金が低迷する一方で、1999年に比べ大企業の経常利益は3・2倍、株主配当は実に7倍以上も増えています(下左のグラフ)。
労働者が働いて生み出した利益(付加価値)の配分がどう推移してきたのかを表したのがグラフ(下中央)です。1999年と2021年を比較すると、労働分配率は62%から51.5%と10.5ポイントも低下したのに対し、企業分配率は14.6%から30.7%と2倍以上も増加しています。
小企業賃金は大企業の約半分格差も拡大
企業規模別の賃金の推移を表したのが下右のグラフです。小企業は大企業の約半分しかなく1998年と比べさらに5%も格差が広がっています。
経済が低迷する中で、大企業が労働者の賃金と下請コストを抑え込むことで利益を上げ続け、内部留保と株主配当を急増させてきたことが分かります。
不公正税制を正し、異常に溜め込んだ内部留保の社会還元を!
資本金10億円以上の大企業約5800社の2021年度の内部留保は、前年度から18兆円も積み増しされて484兆円(中小を含めた全企業では856兆円)にまで膨れ上がっています。
景気の低迷で売り上げが伸びていない中で、大企業が、賃金や下請け単価を抑え込み、不公正な大企業優遇税制を活用することで利益を上げてきたことを紹介してきました。
不公正な税制を正し、異常に溜め込んだ内部留保を社会に還元して国民の懐を温めることが、日本の経済発展にもつながります。
大企業の人件費と内部留保
日本を代表する大企業であるトヨタ自動者の人件費と内部留保を示したのが左表です。
2021年度の内部留保は18兆6415億円です。来年度の政府予算114.4兆円の16.3%という途方もない金額です。従業員1人当たりでは2億3120万円となり、自治体職員の退職金を含めた生涯賃金に相当する額です。
溜め込んだ内部留保を少し取り崩すだけで大幅賃上げや下請単価引き上げが可能
月2.5万円+ボーナス6ヶ月の賃上げ(年45万円)に必要な従業員一人当りの内部留保額を試算したのが表5です(主要企業100社)。わずか1.39%の取り崩しで実現できます。大企業には大幅賃上げと下請単価を引き上げるだけの体力が十分すぎるほどあります。
異常に溜め込んだ内部留保を社会に還元させ、国民の懐を温めて家計の消費支出を増やすことが景気回復につながることを広げましょう。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
これからも日本の今を考え、働くものがもっと豊かになる社会をめざしたいと思います。
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